坂本直樹Ⅱ

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家を出発してから、早一時間。 直樹たちを乗せた車は、無事に高速道路に入った。 当然まだ、終わりは見えない。 東京から名古屋までは車で五時間近くかかるらしい。 隣では早速オンラインゲームを始める、瑠依。 瑠依がこの日のためにモバイルバッテリーを買いあさって、しっかりと充電していたのを知っている。 その数、約二十個。 直樹は運転手の交代に備えて、しばらく眠ることにした。 どれぐらいの時間がたったのか、直樹は人の声で目が覚めた。 「下りないの?もうすぐ出発しちゃうよ」 「無理。今、討伐戦」 「でももう時間も遅いし・・・」 「うるさい、黙って」 直樹はあくびを噛み殺しながら、二人の論争を聞いていたが 「ねえ、今どこなの?」 なかなかおさまりそうにない論争にとうとう口を出した。 「あ、直樹起きてたんだ。道の駅に着いたよ!」 「今起きた」 そう言いながら辺りを見回すと、広い駐車場にご当地の雑貨屋や土産屋それに屋台。 「今どこらへんなの?」 直樹がもう一度問いかけると、 「ここだよ。あと半分ぐらいかな?」 と颯斗が地図を持ってきて丁寧に説明してくれた。 「それで何でけんかしてんだよ?」 そういうと、颯斗がため息をついた。 「それがさ、道の駅に着いたから、かれこれ三十分は立つんだけど、瑠依が討伐戦やらなんやらで動かなくて」 それを聞いて思った。 討伐戦とかどうでもいいから、もっと早く起こしてくれと。 「てか、そんなに急いでんの?」 時計を見るとまだ午前十時過ぎ。 「別に急いでるわけじゃないけど」 「昼をここで食べて、ゆっくりしてから行こうぜ」 というと、颯斗は口を尖らせた。 「でも、名古屋で昼食食べたかったのになぁ。瑠依ともそう相談してたし」 瑠依のほうを見るとゲームに没頭しているようで、顔も上げなかった。 「瑠依もゆっくりしたいってよ」 直樹が勝手に代弁した。 「別にいいけどさ」 最後には颯斗が折れた。 これはいつものことだ。 「じゃあ俺はいいものがないか、探してくるよ」 そういって、颯斗は車を降りて行った。 残された直樹は、もう一度目を閉じると深い眠りについた。
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