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おそらくそれが話し合われたのは、先週あった病院会議でだろう。
しかし、その会議で直樹はスマホをいじっていて全く話を聞いていなかったゆえ、何を論じ合われたかすら覚えていなかった。
そもそも、適当に勉強して、適当に医者になれた直樹はその膨大な知識の中から常識だけがことごとく欠損していた。
学生時代、たいして勉強をしなかったがなぜか有名大学の医学部に受かってしまったのだ。
それどころか、医学部の中では過去最優秀の学生として扱われ、不自由など全くなかった。
そんな直樹にとって、何時間もひたすら人の話を聞き続ける会議はつまらないものに他ならなかった。
そして、つまらないものはとことん避けてきた直樹にとっては、地獄のような時間なのだ。
今まで、直樹は好きなことを好きなだけ適当にやってきただけだ。
オペは、直樹の人生最大の楽しみだった。
しかし、数年前直樹は、女と一夜を共にするという楽しみを知った。
そして、なぜか自分がモテる容姿をしていることに気づく。
まあ、そういう風にとことん自由に生きてきたのだ。
直樹は病院を出ると自分の家へと向かった。
知識としてたくさんのことを蓄えている直樹だが、その知識がどうしてか現実と結びつかない。
まるで教科書をそのままコピーしたような知識だった。
それでもオペを失敗したことはなかった。
直樹は来週に振り替えとなったオペのことを頭の隅に刻み込むと、人通りの多い道を急ぎ足で通り過ぎる。
派手な化粧をした女が向かい側から近づいてくるのが見えた。
直樹は友人二人と同居している。
お互い、全く違う性格で一体どういう経緯であったのだろうかと、時折考えることもあるがそれでも友達なのだ。
道端で出会ったといっても過言ではない。
そして、お互いの全く違う性格に惹かれて、同居することになった。
きっと自分にはないものをお互いが見出したのだろう。
そして現在、3LDKの一軒家を買って住んでいる。
直樹は化粧が派手な女性とすれ違った。
今夜はその同居している友人が、すき焼きを作って待ってくれている、と頭の隅で思い出したが気づいたらいつものように直樹は声をかけていた。
「あの、今夜ご一緒にどうですか?」
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