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人類の代表者として、発言者である男が壇上に上がった。 彼には、どこかで用意されていた拳銃が渡された。キラキラと光るきれいな銃だった。すべての権利は彼に委ねられた。
「そんなもの。早く壊してくれ!」
年老いた老婆が、男口調でそう言った。
男はゆっくりと銃口をタイムマシンに向けた。その瞬間、人々は、自分たちが必死で嘘をついていたことにやっと気づき、偽りを演じていたことを自覚し始めていた。
男は引き金に指をかけた。その瞬間、彼の中に先ほど世界から称賛を受けた時に感じたものの何十倍何百倍もの高揚感が生まれ、足先から脳天までを光の速度で突き抜け、そして、体中を満たした。
男は引き金を引いた。
銃口は壇上の科学者たちに向けられていた。
彼は、その場にいた科学者たちを全員殺した。かかった時間は、十秒もなかった。
最後の一人を撃ち殺した後、男は大きく深呼吸し、高揚感をなんとか抑えこむことに成功した。そして、震えた力強い声で叫んだ。
「私は神だ!」
そして、自分の息子と娘を壇上へと招いた。
「二人を人類の始まりに送る。」
文明の始まる前に二人を送り、人類を創造させ、神を作り出す。それが彼の目的である。
人々はまだ沈黙していた。
男は、タイムマシンの扉を開いた。中から冷たい風があふれ、会場を満たした。
「お父さん。私行きたくない。」
娘がそうつぶやいた。
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