タイムマシン

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 「何を言っているんだ。お前が行かなきゃいけないんだ。」  彼女は動こうとしなかった。娘の背中を押す父親の力が強くなる。息子の方は、何も言わず沈黙するだけの人々と対峙していた。人々は皆、息子よりもはるか年上であった。彼は、全身に力を入れて、内から湧き出るすべてを抑え込んでいる風だった。念のためいうが、その内から湧き出るものは高揚感ではない。むしろ、反対に暗く、重いものである。  「いやだ。いやだ。」  女の子がついに泣き出した。父はたまらず、娘を打とうとして手を挙げた。  その時、赤道直下の国の少年が、会場に現れた。  良かった。間に合った。  「僕が行く。」  時が止まった。止まった時間を動けるのは、少年と壇上の3人だけだ。  最初に、父である男が動いた。彼は突然おう吐した。嗚咽を交えて泣き出した。彼もまた、息子と同じように内からこみあげてくる何かと戦っていたのだ。  少年は、壇上に上がった。  「ありがとう。」  息子は一言そう告げた。     
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