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タイムマシン
タイムマシンの発明は、何の前触れもなく発表された。仕組みは単純でまず科学者たちが絶望した。
もちろん、完成発表は荘厳なドーム会場でなされ、世界中に同時配信された。おそらく、数十億人が同時に発表の様子を見ていたことだろう。宗教、文化、もっと言えば個性の全く違う数十億人の人々はみな、不安という同一の感情を共有していた。
発明者は、完成報告と原理の概要を話してすぐに殺された。人々はそれを当然の結果であると考え、彼の死を見届けた、
「僕が行く。」
赤道直下の国で発表の様子をテレビで見ていたひとりの少年が突然そう言った。
そばにいた若い両親、最初、彼を止めようとしたが、結局行かせることにした。彼を止めるには、あの発表者のように殺さなくてなくてはならないからだ。二人の決断は私が思うに、人類最高のやさしさと残酷さをに満ちたものだったのではないだろうか。
さて、行かせるからには、必ず間に合ってほしい。両親はそう思い、すぐに少年を飛行場まで向かわせた。
発表会場は、殺された発表者に代わり、絶望した科学者たちが取り仕切っていた。
「こんにちは」
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