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彼女は髪をスッと上にかきあげて結び、ゆかたには淡い色の牡丹を咲かせている。彼女は微笑みながら、夜店をのぞき込んではぼくを見て、またのぞき込むのを何度か繰りかえす。
夜店から、美味しそうな匂いがしてくる。イカ、やきそば、やきとり、いろいろだ。彼女は、何か見つけたらしく、
「これ買っていい。」
と指さしながら嬉しそうにいう。その先には、白い厚紙にアンダーギ百円と書かれていた。
彼女の手には、茶色の袋。そこから、小さな丸いものをとりだして口にはこんだ。これ、お婆ちゃんがよく作ってくれたんだ。お婆ちゃんのはもっと美味しかったんだけどな。
ぼくたちは、明るい場所からはなれて、堤防のある暗い場所にすわった。ぼくは、この場所で花火をみることにしている。ここは、あまり人がこない。
「なんだかさみしいところね。」
「いやだったら、ほかのばしょにいこうか。」
「いいよ、ここで。」
ヒンヤリしていたコンクリートの感触がきえると、むこうにパッと光がさく。一度、二度、そして間をあけずに、もういちど。花火があがる。チリチリと残り火がきえると、後ろの暗闇を一筋の光がはしって、ドンとなる。
ぼくたちは、消えては生まれる花火を目でおう。飽きることなくみている。彼女はそっと、ぼくの指にふれる。チリチリと散る光がとおりすぎる。
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