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「というのが桜があったころの私たちの話。」
先生が話し終えても子供たちは満足してない様子だった。それもそうだ肝心の約束はどうなったのか桜はどうなったのか話していないのである。
「そのあとどうなったの。」「続きは?」
「でもさぁ」
興味津々に話を聞く子供たちの中で一人、違う表情の子供がいた。
「なんだい。翔太君。」
先生に尋ねられた翔太は答えた。
「だって約束叶ってないだろ。今の時代に桜あるなんて聞かないし。」
先生は優しい表情のまま
「痛いとこ突くな翔太君は。約束は残念ながら叶えられなかった。」
先生の言葉にみんな残念がっている。
先生は話を切り上げて授業に入った。いつもなら。
「よーし今日の授業はいつもと変えて外でやろうか。隣の県までいってねぇ。それでは下足に集合しようか。」
子供たちはいつもと違う授業に浮かれて教室を飛び出した。
バスに揺られて一時間、すると大きな公園に着いた。
「なにここ?」
子供たちの問いに先生は「お楽しみだから。」としか答えなかった。
公園の管理人と思われる人が出てきて先生に話しかけた。
「すいません。一番の功労者が最後に見る事になってしまって。」
「いいのですよ。どうせなら子供たちと見たいと思っていましたし。」
「そう言っていただけるとありがたいです。」
このようなやり取りを済ませるとその人は公園を案内してくれた。
その人に連れられた広場に子供たちは興奮した。
ピンク色の木が見えたからである。
子供たちは我先にとそのピンクの木に走り出した。
子供たちはピンクの木に到着、そして遅れて数十秒して先生が到着した。
「先生もしかしてこれが桜なの!?」
「ああ……そう。これがこれが桜だ。」
子供たちの綺麗やすげーの声の横で涙を流した。
先生はだれにも聞こえないほど小さな声でつぶやいた。
「ごめんよ。約束守れず。遅かった遅すぎた。私一人になっちゃたよ。でもやり続けてよかった。またこの光景を見れるとは思わなかった。やっと下の世代に桜を伝えれた。よかったよかった。」
広場の真ん中に堂々と一本立っている桜は満開だった。
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