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(で、どこのクラスだろ?)
私は廊下を歩きながら、生徒もまばらになった放課後の教室を覗き込んでいく。
彼女が立ち去っていくらも経ってない。カバンを持っていなかったし、一度教室に戻っていると踏んだのだけれど。
(あ、居た)
明らかにリア充グループらしき三人組の女子。
私は少し物怖じしながら近付いて、話し掛けた。
「あの、これ。落ちてましたよ」
出来るだけ目を合わせないようにして、私は下を向いたままラブレターを差し出した。
そして降ってきたのは、意外な言葉。
「ああ、そのゴミね。テキトーに捨てといて」
意外過ぎる返答に、私は「えっ?」と顔を上げてしまった。
目の前には、肉食系の笑みが三つ。
「ていうか、人が捨てた物わざわざ拾って来ないでよ。これだから良い子って面倒」
「ねー。ありがためいわく? ってやつ?」
「ははっ。ゴミ拾ってくるとか超ウケるんだけど。犬かよ」
まくし立てられて、私はちょっと混乱した。
「え? でもこれ、ラブレターで……大切な物なんじゃ?」
「べっつにー。大切じゃないわよソレ? ピュア系がタイプだって聞いて、テキトーに書いたやつだし」
「適当に……」
「そ。テキトーに」
そう言った彼女は私の手からラブレターを摘み取って、ビリビリと破り捨ててしまった。
(なっ……そんな簡単に)
それには、凜くんへの大切な想いが、綴られているのだと思っていた。
だから大事にして持ってきたのに。
その破片が舞い散る様を見て、私は、抱えていた本を固く握り締めた。
「……だから、叶わないのよ」
零れ出た小さな言葉を、彼女達が「あ?」と聞き返す。
私は本を抱き締めるようにして、お腹の底から、言ってしまった。
「そんな軽い気持ちで告白するから、フラれるって言ってるのっ!」
その大きな声に、自分で驚いてしまう。
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