不断桜

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 けれど、彼女にはそれが可笑しかったようだ。   「ははっ。なに必死になってんの? 別にフラれたって、次見つけりゃいいじゃん」  道化師を眺めるような視線が、私に刺さる。 「あんま好みのタイプじゃなかったし? でも顔だけは超イケメンだから、連れて歩けば気分良いと思ったのになー」 「ねー。せんぼうのまと? ってやつ?」 「それな! 女の価値は連れてる男で決まるし」  彼女達が、ケラケラと笑う。  私は何か言いたくなって、考えもまとまらないまま口が動いた。 「次を見つければいいとか、連れて歩いたら自慢出来るとか。……『好き』って、そんな薄っぺらいものなの?」  私は声を抑えて、うつむいて話した。  返ってきたのは、ダンッ! と机を叩く音。  彼女は机に手を突いたまま、威圧するように間を詰めてきた。 「じゃあ、お前の言う『好き』ってなんだ?」    真っ赤な唇から出てくる追求が、蛇のように私を絡め取る。   「もしかして、この本に書かれてるような、『永遠の愛』とかか?」  ネイルを塗ったテカテカと光る指先が、本の表紙をグリグリとえぐる。  すくんでしまった私が何も言い返せずにいると「ぷっ」と吹き出す声がした。 「あははっ! えいえんのあい? 今時そんなの信じてる子いるんだ?」 「うわダッサ。それは真剣にダサい」  その嘲笑に、私は反論したかった。  けど、出来る訳なかった。  だって、そんなものは無いって、私も思ってるんだから。 「大体さ。もしそんな『好き』があったとして、お前みたいな陰キャを好きになってくれる奴なんているの?」 「だよねー。ぜったいモテないし」 「『いつか素敵な王子様が永遠の愛を』ってか? ぶはっ。何それ? ぶははははっ。アイタタタ。笑い殺す気か」  やめて。  そんな事はありえないって、私が一番わかってる。  こんな私を本気で好きになってくれる人なんて、現れない。  ずっと好きでいてくれる人なんて、いるはずない。  そんなこと、わかってるから……。 「え? もしかして泣いてるの? 自分で喧嘩売っといて?」 「何それー。泣けばいいと思ってんの? お子様なのかな?」 「お子様だから信じてるんでしょ? 自分はお姫様だって、ねえ?」  矢継ぎ早に繰り返される揶揄。  涙が零れそうになって、けど言い返そうとして、私は顔を上げた。
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