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身だしなみを整え、腕時計を見る。
「そろそろ……かな」
独り、呟いた。その直後、強い風が吹き、桜の花びらが舞う。
「やあ、はじめまして」
俺は桜の後ろに回り、隠れていた少女に話しかけた。だいたい7、8歳といった頃だろうか。白いワンピースに薄い桃色のカーディガン。茶色の髪はポニーテールにまとめてある。
「は、はじめまして」
緊張しているのか、声は上ずっている。そりゃそうだろう。彼女からしたら変なおじさんに声をかけられたのと変わらないのだから。
「そんなに怖がらないで。お兄さんはね、こういう人なんだ」
そう言うと、自分は名刺を渡した。漢字が読めないのか、彼女は首を傾げている。
「清水光輝って言うんだ。宜しくね」
なるべく警戒心をなくそうと少女のそばにしゃがみ、優しげな声を出す。
「これは?」
少女は名刺の上を指差し、聞いた。
「あーそれは……」
一瞬、答えようか迷ったが、後に知ることになる。答えようと決めた。
「死神紹介事務所って言うんだけど、難しいかな?」
コクコクと少女は頷く。
「あの世に連れていく者を紹介してくれる場所だよ。君のお母さんはあの世に行っただろう?」
自分の仕事をわかりやすく言え、と言われても難しい。もう少し年齢を重ねていたら説明しやすいんだけど、それは無理な願いだ。
「お母さんのところに連れてってくれるの?」
答えづらい質問だ。なぜって、連れていくだけの者に決めることは不可能だから。
「それは、どうだろうね。僕に決めることは出来ないけど……君がいい子なら行けるんじゃないかな」
少女は不思議そうな顔をしたままだ。まだ理解出来ないままらしい。
「お母さんに会いたい?」
こういう事を聞いていいのか分からない。しかし、霊を輪廻の輪まで連れていくには説得するのが一番いい。
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