第三話  龍の乙女

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 2・  翌日の午後、やっと現場検証を終えた警察官が立ち去った。  その後の父と兄の悲嘆にくれた姿は、哀れを誘うに十分だった。  龍神の泉は勿論のこと、竜神の森の浄化と結界の張り直しは大変な作業である。神社の中は大騒ぎだった。  そんな中で、歩み寄って来た恒星が話があると言う。  竜神の森の奥の院で、ワタシと恒星は向き合った。  「セイラ、お願いだからもう仕事を辞めてくれ。君があんな危険の中にいつも身を置いていると思うだけで、心配で気が狂いそうになる。耐えられないんだよ」  恒星が、辛そうに言葉を絞り出した。  見詰める恒星の眼が、ワタシを縛る様で怖い。解っているのだ。  何時までも、こんな生活を続けられはしない。これは一時の夢、いつかは終わりになるお祭りに似ているのだと。  「もうすこしだけ待って。お願い・・」  背を向けて立ち上がったワタシを、後ろから包んで抱きしめた恒星の、身体から薫る芝草のコロンの匂い。  振り切れない想いが、ワタシの身体を締め付ける。  「もう僕を愛してはいないのか。僕の為では、ダメなのか」  寂しそうに呟いた。  キツク抱く竦めると、無理やり熱く唇を奪った恒星。逆らう勇気が、薄れて消えそうだった。  「僕は・・諦める・」  絞り出すような恒星の声。  「君を縛ることは、滔々できなかった。こんなに欲しいと思った女は、君が初めてだった」  腕を解いて、後ろに下がるとそのまま奥の院を出てゆく気配がする。  恒星が遠ざかっていくのが、解る。  「あの夢と同じだ」  苦しくて、息が止まりそうだ。  不意に人の気配がした。  横に並んで立っているジュリエット。 (夢じゃない!本物の幽霊の出現に、流石に悲鳴をあげた)  {何やってるのよ。サッサと追い駆かけなきゃ駄目じゃないのよッ}  バシッと、どこかで家の柱が鳴った。  凄まじいラップ音だ。
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