第三話  龍の乙女

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 如何してご隠居の本郷の屋敷の襲撃があれ程簡単に出来たのか、情報分析室のミカエルが収集した情報を精査した。  その結果をボスに報告するのとほとんど同時に、ロビンフットが姿を消したのだ。  ジュリエットの殉死の後だけに、ボスもパパゲーノも真剣に探した。ミカエルの出した分析結果が、信じられなかったのだ。  ミカエルは藤森に張り付いていたはずのロビンフットが、藤森の誘拐に何も情報を上げていない点に着目した。  そこから調べて行き、警察内部にいる香港マフィアの内通者ではないかと疑ったのだ。  だがボスとパパゲーノは、断固として信じなかった。  「まさか、また香港マフィアの餌食に為ったんじゃないよねぇ」  「縁起でもない事を、言わんでください。ボス」  二人はけんか腰でいがみ合うほど、心配したのだ。  そして最後にロビンフットが目撃された葉山で、地元の警察が恐るべき情報を掴んだ。  海岸沿いの高級別荘地にあるレストランの駐車場に設置した監視カメラに、ロビンフットの姿が確認されたのだ。然も、李周人の親衛隊のメンバーと一緒に。  そのレストランから少し離れた場所にある政治家の別荘に、複数の怪しい男たちが集まっていると、近くの住民から情報は寄せられてはいた。  だが当初、警察は持ち主の政治家が大物であることを考慮に入れて、「別荘で何かのイベントが在るのだろう」、と判断した。  大してその情報を真剣に取り合っても居なかったのだが、念の為に近くにある監視カメラをピックアップして、画像の確認をとったのである。  それは後々の保身のため、県警本部から苦情を受けた時に受け流せる様にという、地元警察署の責任逃れの一環だった。  だが顔認証システムの導入によって、香港マフィア系の指名手配犯が引っ掛かったのである。その男と一緒に居たのが、ロビンフットだった。  警視庁の組織犯罪対策課に連絡が入り、ミカエルの分析の正当性が証明された。  「何時からだろう。もう一度、徹底的にロビンフットの身元を洗い出さねばな」、組対五課の課長命令で捜査が始まった。
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