第三話  龍の乙女

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 あのご隠居の病院にロビンフットも呼ばれていたなら、横浜の計略は失敗に終わって居た事だろう。  だがあの時、ロビンフッドは別の任務で潜入捜査に当たっていた。本部との連絡も絶って、東京を狙っている九州の広域暴力団の麻薬密売の情報を追って、福岡のホストクラブに居たのだ。  そして遂に腰の重い県警が、葉山の別荘に捜査員を送り込んだのが昨日だ。  其の別荘はもぬけの殻、李周人は一足早く逃走した後だった。  だからボスとパパゲーノは、一刻も早く何も知らないセイラにロビンフットの正体を伝えに来た。彼がセイラに接触するのを阻止する為に、彼女の田舎まで会いにきたのだった。  「セイラもきっと、信じられないって言うよなぁ」、ボスが鎮守の森の奥に目を遣り、小さな声で呟いた。  二人もメンバーを失ったBチームは、恐らく解散だろう。かつて、あの焼き鳥屋でチームが交わした笑顔や、何でもない会話の数々。そんな記憶が辛かった。
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