第一話  蘇州夜曲

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第一話  蘇州夜曲

 (夢の中へ)  時は昭和初期。  朝霧が流れる上海租界の街。  其処にたたずむワタシ。  そんな夢を、見る。  その夢の中に何時も浮かび上がる、「その人」がワタシを呼ぶ声。  その人はワタシを、「ファンファン」と呼ぶ。  日本語で「芳子」と、たまに呼んだりもする。  それは儚い恋のこだまに似ている。  夢の中に現れる「その人」は、愛おしくて懐かしいはずなのに、何処か実体のない影絵にも似て掴まえ所が無い。  上海租界と言う街の響きが、ひどくもの悲しくて懐かしい。  そんな夢を、私は時々見る。
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