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第三話 龍の乙女
(愛の夢)
故郷に帰って三日目。
不思議な夢を見た。
それは甘くて苦い味のする、愛の夢だった。
恒星が、別れの言葉を口にしている。
信じられ無い程の哀しみ。
ただ茫然と・・ワタシの身体に回した腕をほどいて、去っていく彼を見ていた。
何故か私の横に、ジュリエットが居る。
「アンタは馬鹿よ」
ワタシを睨んで、説教をしている誰よりもイイ女のジュリエット。
「アタシがどんなに欲しくっても手に入らないモノを、アンタは持ってるって言うのに。このおバカさんが・・」
責めるような、でもどこか哀し気なその声は山の木々に木霊して・・
その指差す先を見た私。
そこに見えたのは、森の道を遠ざかっていく恒星の後ろ姿。
「行くのよ!」
ジュリエットがまた叱った。
恒星の寂しげな背中が、森の中を遠ざかっていく。
「凛子ちゃん、勇気だよ」
突然に、頭の中に昇の声が響いた。
「昇お兄ちゃん」、足が勝手に坂道を駆け下りていく。
何かを叫んだところで、目が覚めた。
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