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この世の正しさであれ
予告「覚醒」
薄暗い地下牢にいた。
手足が動かなかった。
何かに縛られているようだった。
「起きて」
姉の声が聞こえた。
「起きなさい」
なぜ姉だとわかるのだろう。意識すらないというのに。いや、待て、意識がなかったら、そもそも人の声など聞こえないはずだ。ということは、「私」は死んでいないのか? では、ここはどこだ? 牢屋? そもそも、「私」は誰だ?
「魔梨花」
ああ、そうだ。『櫻井魔梨花』だ、私は。どうして忘れていたのだろう。
「お姉ちゃん?」
何だ、声が出るじゃないか。自分の声は女性にしては低めだろうか。でも甘くて心地いい響きだと誰かが言ってくれた。
「他の人のことは考えないで」
ああ、お姉ちゃん、ごめんなさい。
「いいのよ。それより、目を開けて」
はい。
パチ、と瞼を上げた。
巨大なモニターに、お姉ちゃんの顔が映っている。綺麗な茶色の髪。優しい目。うちの家族はみんな美人だ。
「ありがとう。それより、これを見て」
また映像が変わる。
現れたのは、きつい目つきの、憎たらしい顔をした男だった。なぜこんなに私を睨んでくるのだろう。
「こいつは、黒子(クロコ)というの」
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