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カチカチと時計の針が動く音が聞こえる。時刻は午前十一時丁度。加藤さんはきっとまたパチンコでも打っているんだろう。勝っているなら連絡をしてくるから残念ながら今のところはまだ出てないんだろう。なんてことを思いながらディスプレイをじっと見つめる。かれこれもう三時間。流石に目が疲れてきた。ディスプレイから距離を取り、机の引き出しから目薬を取り出して両目に入れた。それから目頭を軽くもんで目を開ける。画面の向こうに変化はない。当然だ。そんなことありえないのだから。
マウスを操作して表示されている画面を変えていく。映っているのはこの建物の一室だ。テニスコートぐらいの大きさの部屋が映ることもあれば、四畳ぐらいの小さな部屋もある。異常がないことを確認したら次の画面へと表示させていく。
「異常なし、っと」
全ての画面を確認し、机の上に置いてある用紙を手に取る。三十分間隔で書かれた時間。その横に四角く黒い線で囲まれた欄があり、用紙の下には『異常あり、OR 、異常なし』と記入することと注意書きが書かれている。ボールペンで十一時と書かれた欄に『異常なし』と記入する。ちらりと一枚用紙を捲ってみる。記入する欄全てに殴り書きのような字で『無』と書かれていた。時間の終わりの方は同上の意味を示す『〃』だけ。
加藤さん……。
気持ちはわからなくもないけれど。これを上に報告すれば間違いなく書き直しを命じられるに決まっている。ぼくは同じ用紙を用意すると、『異常なし』と永遠と記載していく。今度煙草買ってもらおう。
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