眠り姫

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 この街で一番高い丘の上に大きな建物がある。一面真っ白い外装に等間隔に取り付けられた窓。さらにその周囲をこれまた真っ白い壁が覆っている。壁の上には粒子鉄線が張り巡らされ、内部には数多くの防犯カメラが取り付けられ、蟻一匹も見逃さないほど。 「刑務所だな」  加藤さんが見た第一印象はそうだったそうだ。ぼくの第一印象も似たようなもので、犯罪者の人が入る病院とかそういった風に思っていた。  実際には、違っていたのだけれど。  正門に着き、詰所で欠伸をしている警備員さんに挨拶をしながらカバンからカードを取り出す。 「毎日ご苦労様だねぇ、ここまでくるの大変だろうに」 「いえ、そんなことないですよ。歩くの好きですし」 「若いのに、感心だねぇ」  なんて世間話をしながら、カードを門の横にあるカードキーの読み取り口にかざす。  ピッという音と同時に正門がゆっくりと開いていく。 「それじゃあ失礼します」 「頑張ってね」  警備員さんに頭を下げながら正門をくぐる。建物の自動ドアを抜け、エントランスの右手に併設されているコンビニエンスストアに入る。棚に並んでいるおにぎりとパンに、ブラックの缶コーヒーを二つを手早くカゴに入れてレジに持っていく。 「いらっしゃいませ」  眠そうな声でレジを通していく店員さんにお金を渡し、店を出る。まだ時間が早いせいかエントランスは静まり返っていて、革靴が床を叩く音だけが虚しく響く。入ってきた自動ドアから真正面の方向に進んでいくと防弾ガラス製の扉の前に辿り着いた。扉横のパネルにカードキーにカードをかざし、その下についているタッチパネルを使ってパスワードを打ち込んでいく。Enterキーをタップし、開いた扉から中に入った。 「一応最新鋭の設備に、最先端の研究をしているからセキュリティには厳しいんだよ」  入所初日に加藤さんから説明されたことを思い出す。初めは面倒くさいと思っていたけれど、一週間もすればここの研究からしたらこれぐらいのセキュリティになってしまうのは仕方ないと思うようになり、一月が過ぎたら、もはやそんなことすら考えなくなっていた。
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