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目が覚めると、そこは知らない家だった。
前の家とは比べ物にならないほど小さな家よ。
私が目を開けて家の中を見渡していると、男が嬉しそうに近づいてきて、何やら食べ物のようなものが乗ったお皿を私の目の前に置いた。
そっと匂いを嗅いでみる。やっぱり食べ物のようだけど、いくらお腹が空いているからといって、こんな得たいの知れないものを食べるわけにはいかないわ。
私は、お皿から目を背けると、再び目を閉じた。
次に目が覚めたら、前の家に戻っていて、前の家族に囲まれている。そんな期待をしながら目を覚ましたけれど、そこは変わらず男の小さな家だった。
男は出かけているのか、居なかったけれど、新しくなっているご飯らしきもののお皿が目に飛び込んできたの。
正直なところ、私の空腹はもう限界を越えていた。
何でも良いから食べたいという気持ちが強くなっていた。
私は、そっとお皿の上のご飯を1口。そこから止まらなくなって、気づいたらぺろりと1皿食べてしまっていた。
帰ってきた男は、空になっているお皿を見て、嬉しそうに笑った。
あんまり嬉しそうに笑うから、私を撫でようと伸ばしてきた手を引っ掻いてやることも忘れて、私はされるがままになってしまう。
男との生活はしばらく続いたわ。
悔しいけど、彼が買ってきたネズミのオモチャに反応してしまって、部屋を駆け回ってしまったり。
私の美しい毛並みも、綺麗な白に戻ったのよ。
ときどき、友達らしき人が家を訪ねて来て、男のことを眼鏡、と呼んでいたから、彼の名前は眼鏡さんなんだ、と思った。
どうにもぼんやりしてる眼鏡さんだけど、私を見ると嬉しそうに笑って、頭を撫でてくれる。それがとても好きだった。
そんな眼鏡さんとの生活が、今度こそずっと続くのかと思った。
優雅な私にふさわしい家とは言えないけど、まぁこれはこれで悪くないかもしれないと、私は思い始めていたの。
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