希望絶望

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「よく聞くのは、新しい恋をする、とか」 「・・・人間の本質とは何だ」 「・・・やっぱり、愛じゃないのか?」 「もう、どうでもいい。人間の事はよく分かった。人間とは、本当に疲れるものだ。しかし今死んでも、我は必ず生まれ変わる。だが何だかもう、その転生が苦痛に思える」 「・・・じゃあ、殺さずに、封印するか。死んだ事にならずに、死んだようになればいい」 「出来るのか?」 「俺に期待してるから、わざわざこんな洞窟の前で待ってたんだろ?」 「フッ。我は初めて、聖剣に感謝する。お前は、今までで、最上の勇者だ」 69回目。 最早、人間などどうでもいい。初めて、我は、我という存在に絶望を感じた。いや、絶望を通り越し、むしろ虚無感といったところだろうか。目の前に居たのは、ひざまづく1人の男だった。 「敵国を滅ぼす為に、邪神様の力をどうかお貸し下さいませ」 「・・・人間の戦争の為に、封印を解いたのか」 これが、人間か。──ああ、リザよ、この目から流れるこの雫は、一体何なんだ。
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