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山王子の存在は就活時期、DDCの会社説明会に参加した時からすでに把握していた。 物怖じせず、担当者にあれこれ質問を浴びせたり、帰り際には周りの学生達とすっかり意気投合して連絡先交換で盛り上がっていたりと、とにかく集団の中で一際目立っていたから。 その後数回に渡る試験、懇親会と、何度も顔を合わせるうちに奴も私の存在を認識したようで、入社後、共に本社勤務となり、新入社員研修を受ける頃には、まるで旧知の仲であるかのようにとてもナチュラルにフレンドリーに話しかて来るようになっていた。 別にその時は奴に対して何もわだかまりはなかったし、無視する理由などないので、若干温度差はありつつも普通に会話を交わしていたけれど。 そして山王子が潤滑油的役割となって、他の同期達とも比較的良好な関係を築けていた。 といっても研修は新入社員全員が一ヶ所に集うのではなく、それぞれの勤務地で一週間だけ行われるシステムで、本社の場合メンバーは10名、しかも女性は私を含め3人しかいなかったので、そのシチュエーションでトラブルが起こることの方が珍しいのだけれど。 それぞれが学生時代とは比べ物にならない、新生活への不安と期待を胸に抱え、『何事も最初が肝心。先輩、上司の言う事には素直に従い、そして同期、特に同性とは仲良くやって行かなければ』という思いで研修に挑んでいたハズだから、わざわざ積極的に喧嘩をふっかけるような事をする訳がない。
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