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しかし、ふてくされた感じで返事をしたり、それとは別の場面で私が業務上の指示を出す度にいちいち挑戦的に聞き返して来たり素直に動き出さなかったりと、とにかく常にプチ反抗を繰り返して来た。 そして今年度、白沢さんが入社してからは、こんな風にあからさまに楯突くようになったのだ。 「後輩を守る」という大義名分の元、堂々と私に口答えができるからだと思う。 白沢さんが泣いたのは今日で通算二回目だけど、他にもちょこちょこやらかしてくれていて、立場上無視する訳にはいかないので仕方なく注意していた。 その都度この二人がしゃしゃり出て来て「宇市さんそんな責めなくても良いんじゃないんですかぁー?ホント酷ーい!白沢さん気にしなくて良いからねー?」と判を押したように同じ台詞を口にするのであった。 「失礼しまーす。あれ?どうかしたの?」 いい加減イライラが頂点に達し、正真正銘怒鳴り散らしそうになったその時、背後から明朗快活な声が割り込んで来た。 すぐに予想はついたけれど、視線を向けると案の定、部屋のドアを半開きにして室内の様子を窺っている奴の姿があった。 私の同期であり、そして憎き天敵の、営業企画課に所属する山王子尊。 すると彼は素早く入室し、ドアを閉め、こちらに向かって歩を進めた。 スーツケースと何やら紙袋を提げている姿から推察するに、外回りから帰って来て我が部署に立ち寄ったのだろう。
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