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千田から開放されて5日。 週末の午後の講義を受けながら、三園は周囲に視線を巡らせた。 いねぇな。 この講義も千田と被っていたはずだ。 しかしそこにはやはり千田の姿がなく、その事実に少し苛立ちを覚えた。 別に会いたいわけではない。 会いたいわけではないが、この5日間、大学に来ている様子もないのが気になっていた。 もしかして、本当に体調でも崩してんのか? あの時カッとなって思い切り殴ったが…もしかして、頭打ってたとか? そう考え出すとキリがなくて、監禁されていた5日間の間に何度も手を上げていたことが三園の頭をよぎった。 「千田、今日もいないね」 隣に座っていた八嶋が小さな声で話しかけてくる。 それに頷いて見せると、三園の口から溜息が漏れた。 別にどうでも良いだろ。 千田のことなんか。 そう思うのに、こうも姿を現さないと気になってしまう。 この5日間、千田と被っていた講義になるとつい室内を見回してしまっている。 そして千田がいないのが分かると、無意識に溜息が漏れていたことに三園は気付いていなかった。 「ね、お見舞い行けば?」 「何で俺が」 八嶋がまた小さく口にした言葉に、三園の心臓が一瞬跳ねた。 「だって三園、ずっと気にしてるじゃん。心配なら様子見に行きなよ。」 八嶋のその言葉に三園の眉が寄った。 心配? 俺が、アイツを? 「別に心配なんかしてねぇよ。アイツのことなんか。」 そのどこか刺々しい言い方に、八嶋は三園の顔を見た。 「…何だよ」 横からまじまじと見つめられ、どこか居心地の悪さを感じる。 「そんだけ『気になります』って顔に書いて溜息まで吐いてるのに。何意地張ってんの?」 「なっ…!」 八嶋の言葉に思わず大きな声が出てしまい、周りの学生の視線が三園に集まった。 「三園、煩いぞ。」 「…すんません」 講師からも咎められ謝れば、講義はまた再開された。 『ごめん、怒られた。とりあえずこの後千田のとこ行こう。俺も行くから』 八嶋がノートにサラサラっと書いた文字を見せてくる。 それには返事をすることなく、三園はそのまま黙り込んだ。 講義の内容は全く頭に入ってこなかった。
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