ユメ

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 ラヴィーカルド王国で妖精たちとの戦争が終わり、300年が経ちました。平和になった王国には、ユメという八歳の少女がいました。その子は出雲から引っ越したばかりで、新しい友達は全然いません。  ユメはある日、骨董屋へ行きました。そこには古びて傷だらけの時計や、ポリンタの大貴族が付けていたであろうブローチなど、たくさんのお宝がありました。 「店主さん、私はお友達が欲しいの。皆があっと驚くような面白いものはないかしら?」  ユメの言葉を聞くと、店主さんが言いました。 「きみのような年の子が驚く品は思いつかないな。でもお友達が欲しいなら、このペンダントを持っていくといい。売れ残りだからお代はいらないよ」  ユメは店主にお礼を言って、ペンダントを手に家に帰りました。お母さんやお父さんに内緒で、こっそり枕元に置いて眠りました。  その日の晩、誰かがユメの肩を叩きました。ユメが目を開けると、闇のような黒髪をした少年がいました。肌は陶器のようになめらかで、とても美しい子でした。 「僕は夜の精。夜しか姿を見せられないけど、きみと友達になりたいな」  ユメは喜んで少年と友達になり、お父さんたちにバレないよう静かに遊びました。  ユメと少年はすぐに仲良くなりました。トランプをしたり、絵を描いたり(少年はお世辞にも絵が上手いとは言えませんでしたが)、絵本を読んだりしました。  しかし少年は本当に夜にしか現れないので、ユメはお昼頃、眠くて仕方ありませんでした。毎日、学校の先生に「ユメさん、起きなさい!」と怒られてしまいます。  それに夜はユメと少年しかいません。犬も虫も花もみんな眠っていて、遊び相手にもなってくれないのです。  だからある日、ユメは少年にお願いしました。 「太陽の下でもあなたに会いたいわ。夜は犬も虫も花も眠っていて、少しだけ寂しいの」  ユメの言葉を聞くと、少年は悲しそうにしました。
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