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「ただいま」
「おかえりなさい、ちょっと遅すぎるよ。心配するじゃない」
「うん。ごめん。ソメイヨシノ、見てた。いや、話してた」
「おお、一人で立派にやりとげたか、女になって」
「お赤飯は二年前です」
「そういう意味じゃないです」
「あ、靴の中にあるね」
「うん、これで最後だと思うよ、押し花にしよう」
「どうだった? 結婚? 披露宴には呼んでね」
「違うよ。見染められてなかった。でも母ちゃん、この話私、母ちゃんにしないでもいい?」
窓からにゅっと風が吹く。
五年越しに追いついて芽吹き、色を染めた初恋はソメイヨシノが知っていた。
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