1人が本棚に入れています
本棚に追加
ひとひらの恋
また、春が巡ってきた。あれから、何度目の春か。
ふわり、ふわりと桜の下で幼子がくるくると跳ねる。
「ととさま」
「ととさま」
同じ容の子供が、幾人も。
僕を「父様」と言って、手を引いて笑う。
「空太さま」
ただ一人、しゃんと背を伸ばした綺麗な少女が僕の名を呼んでいる。
「また、会えて嬉しいです。・・・白髪が、増えましたね」
「君はまた、綺麗になりましたね、夕紅。少し、背が伸びたかな?」
頬を赤らめて、少女が微笑む。
あと数年もすれば、誰もが目を瞠るほど美しい女性に変わることだろう。
かつての彼女のように。
僕の愛した、彼女のように。
最初のコメントを投稿しよう!