ひとひらの恋

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ひとひらの恋

 また、春が巡ってきた。あれから、何度目の春か。  ふわり、ふわりと桜の下で幼子(おさなご)がくるくると跳ねる。 「ととさま」 「ととさま」  同じ(かたち)の子供が、幾人も。  僕を「父様(ととさま)」と言って、手を引いて笑う。 「空太(そらた)さま」  ただ一人、しゃんと背を伸ばした綺麗な少女が僕の名を呼んでいる。 「また、会えて嬉しいです。・・・白髪が、増えましたね」 「君はまた、綺麗になりましたね、夕紅(ゆうべに)。少し、背が伸びたかな?」  頬を赤らめて、少女が微笑む。  あと数年もすれば、誰もが目を(みは)るほど美しい女性に変わることだろう。  かつての彼女のように。  僕の愛した、彼女のように。
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