第4章

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午後の日差しが、枝葉の隙間から頬に差す。  聞こえるのは、風と水面の揺れる涼やかな音だけ。  獰猛な魔物の声も、外の世界の喧噪も、迷いの森の深奥部には届かない。  幹にまで白く小さな花を芽吹かせた大木の根本に、透き通った青い泉が形成されている。  その泉の中で、シェイドは一人まどろんでいた。  天を仰ぐように、仰向きで水面に浮かぶ。  水はまとわりつくのではなく、シェイドの体を慈しむように寄り添っていた。 「ーーシェイド」  閉じていた目を開け、シェイドは声のした方を見る。  泉の側に、タオルをくわえたルーヴが座っている。  側には着替えも用意されていた。 「いくら癒しの泉でも、長く入っていれば風邪をひくぞ。そろそろ上がった方がいい」 「もう少しいさせてくれ。ここが一番彼女を感じられるんだ」  浮かせていた体から力を抜き、泉の中に全身を沈めた。  とたんに静寂が訪れる。  ゆらゆらと波打つ水面を、水中から静観した。  そのまま下へ下へ、泉の側に立つ巨木の根を追って潜り続けると、水底に青白く輝く球体が見えてきた。  内側から発光している球体を守るように、巨木の根が周りを取り囲んでいる。  根の先は球体の中へ続き、"彼女"の胸元から生え出ていた。  胸の前で手を交差し、眠るように目を閉じている女性。  球体の表面に手と額を押し当て、シェイドも同じように目を閉じた。
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