第4章

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(・・・・・・アシュレイ)  これほど近くにいるのに、触れられない。  美しい黒髪、きめ細かな白磁の肌、長い睫が縁取る瞼。  全てが美しくーー愛おしい。  今すぐにでも抱き寄せ、掻き抱きたい。  それなのに、ただ見つめる事しかできない。 (早く、お前を自由にーー)  息が苦しくなり、シェイドは水面へ浮上した。  大きく息を吸い、荒い呼吸を整える。 「・・・・・・くそっ」  水面に拳を叩きつけ、毒づいた。  息が続くわずかな時間しか、彼女の側にいられない。  それが腹立たしくて仕方がない。  顔にかかる髪を掻き上げながら岸に上がり、濡れた衣類を脱ぎ捨てた。  体の至る所に、古傷がいくつも残っている。  その中でも一際目立つのは、比較的新しく、大きな傷だ。左肩から右脇へ袈裟懸けに残る裂傷痕と、胸部にいくつも残る傷跡。  それらを意に介さず、シェイドはタオルで全身の水気を拭いた。  乾いたシャツに袖を通していると、他の着替えをくわえたルーヴがすり寄ってきた。 「レボリスに戻るのか?」 「ああ。そうしないとうるさい連中がいるんだ」 「上層部、とかいう奴らか? 放っておけばいいものを」 「そうもいかないんだよ」  先日生徒を危険に晒してしまった。  全員無事だったとはいえ、学園の責任問題に関わるという事で、課外授業を発案したシェイドを査問するそうだ。  何を言われようと、どんな罰則を下されようと知ったことではない。自分の身に不利益な事が起これば、即刻レボリスを去ればいい。  それこそ武力行使で森へ戻る。  そもそも本業は"こちら"なのだ。
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