824人が本棚に入れています
本棚に追加
「イラの町は賑わっているかと思っていたのですが、この荒れ具合は一体どうされたのですか?」
「いえ、お客様にお話しするような事では・・・・・・」
「そう言わず。何かお力になれるかもしれませんよ」
男性は言いにくそうに口ごもった。
「旅行者様にお話しするような話ではないのですけれど、イラでは最近若い男のみがかかる病が流行始め、働き手が減りました。
薬を買おうにも町医者も死に、都市へ行こうにも、病に合わせたかのように町の周辺に魔物が現れて・・・・・・」
「それを中央都市には伝えましたか?」
「もちろんです。ですが、なかなか軍の方がいらしてくれなくて」
心底困り果てているようで、男性はがっくりと肩を落とした。
「私の孫も流行病にかかり、奥で寝ております。お二人も出来る限り早くこの町を離れた方がよろしいかとーー」
「どのような症状ですか?」
「・・・・・・は?」
「その病とは、どのような症状なのですか」
瞼を閉じたまま、男性の方へまっすぐ体を向けてシェイドが訊ねた。
男性は目をしばたかせた後、思案した。
「高熱や嘔吐がほとんどですが、酷い者は意識が混濁したりーーあと、体に奇妙な痣が現れます」
「痣?」
「ええ。蛇のような細長い痣が、足から現れて全身に巻き付くような・・・・・・」
シェイドはリアンの手を軽く握る。
すると、リアンも握り返してきた。
それを確認し、シェイドは男性に問いかけた。
「少し、お孫さんを診させていただくことは出来ますか? こうみえても魔法薬学師なので」
最初のコメントを投稿しよう!