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「魔法薬学師・・・・・・?」
「魔法薬で傷や病を治癒する者です。
医者ではありませんが、お孫さんの状態によっては助けられるかもしれません。勿論、お金もいりませんので」
「大変失礼ですが、お客様は目がお見えでないようですが、本当に大丈夫ですか?」
「俺は目が見えない代わりに、他の感覚が発達しています。弟が助手をしますし、ご安心ください」
「・・・・・・では、お願いいたします」
こちらです、と男性は階下を示し、三人は登っていた階段を再び降りた。
孫を隔離しているという部屋へ向かうと、丁度中から女性が出てきた。
やつれ果て、疲れた表情を浮かべる女性は、男性を見て「お父さん」と声を発した。
男性は女性に近寄ると、孫の様子を訊ねた。
「ミア、フィルの様子はどうだ?」
「熱は相変わらずで、痣が胸まで広がってきたの。どうしたら・・・・・・っ」
ミアと呼ばれた女性は顔を両手で覆い、すすり泣いた。
彼女の背を撫でながら、男性はすがるようにシェイドへ懇願した。
「お願いします、どうか孫を・・・・・・」
「お父さん、この人達は誰? 何する気?」
隈の目立つ瞳を細め、ミアは殺気立つ。突然現れた男に警戒心を露わにして、扉の前に立ちふさがった。
「お医者様ですか?」
「いえ、魔法薬学師です」
「魔法薬学師なんて、金儲け目当ての詐欺でしょ!?
ーーお父さん、お隣の息子さんもインチキな祈祷師が渡した薬を飲んで亡くなってるのよ! うちのフィルまで殺させてたまるもんですか!」
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