第5章

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 何をするにも逐一(ちくいち)フィルの了解を得ながら診察すると、彼を苦しめている主な症状は、高熱と嘔吐、それから胸元まで広がっている赤黒い痣だと分かった。  シェイドの代わりに痣を診たリアンによれば、話に聞くとおり、体に蛇が巻き付いているような広がり方だった。 「この痣はいつ現れましたか?」 「二週間ほど前です。最初は足首に黒い点が二つだけだったのに、今では胸元まで広がって・・・・・・。  この痣が全身に回った人は、必ず死んでいるんです」  最後は言葉を詰まらせ、ミアはすすり泣いた。  彼女に気の利いた言葉の一つでもかけてやれればよかったが、今は診察が先だ。  シェイドはフィルの足を確認するよう、リアンに頼んだ。 「うわ、皮膚が真っ黒」  シェイドにのみ聞こえるよう、リアンは呻いた。  痣が広がったことにより、足の皮膚は黒く変色しているらしい。  痛みはないとフィルは言うが、症状の悪化と痣の進行がほぼ一緒のことから、病の原因は痣にあるのかもしれない。 (しかし、そうなると病人の性別が男ーーしかも若年層だけなのが気になる。これは本当に病なのか?)  疑問は残るが、今はフィルの苦しみを和らげてやるのが先だ。  シェイドは荷物から薬品の入った袋を広げ、その場で手早く調合し始めた。  解熱、嘔吐の緩和。その二つが最優先だ。  急ぎながらもミアへの説明は忘れず、薬が出来たらまず自分の口へ入れた。  それで安全であると彼女に証明し、ようやくフィル本人の口元へ運ぶ。飲ませる役目はリアンだ。  高熱に苦しめられ、ぐったりとしている彼は、嫌がる力も残っていないのか、素直に苦い薬を受け入れた。
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