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無邪気に笑い、フィルはシェイドの目を覗き込むする。
畏敬の目を向けない少年に、シェイドは恐る恐る訊ねた。
「この目を不思議に思わないのか?」
「綺麗で不思議。そんな目の色見たことないよ、僕」
「それだけ?」
「ん?」
何を問われているのか分からないのか、フィルは首を傾げた。
紫の目を持つ人種は、世間が知る限り紫眼の魔導師ただ一人。それも謎の失踪により存在しない事になっている。
もしかすると、フィルの年齢では魔導師そのものの存在すら聞かされていないのかもしれない。
「フィル、この目の事は内緒にしてくれるか?」
「どうして?」
「この目が原因で、お兄ちゃんは色んな人にいじめられるんだ。だから、目が見えない事にしているんだよ」
「そうなんだ。よしよし」
フィルは布団から片手を出し、シェイドの手をつたなく撫でた。
お返しにシェイドも頭を撫でてやりながら、幾分か体調が良さそうなフィルに、痣について聞くことにした。
「熱と吐き気は治まっているけど、痣が出来た原因が分からなくて困ってるんだ。
何か、痣が浮き出た原因に心当たりはないかな?」
「分からない。町の外から帰ってきたら、足首に黒い点々が出来てたの」
シェイドは眉をひそめた。
「町の外? 外は魔物がうろついているんじゃないのか?」
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