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「そうだけど、薪を取りに行かないといけないし、お店やさんも来なくなっちゃったから、自分たちで食べるものを探さないといけないの」
食べ盛りであろう少年の頬は痩け、腕はやせ細っている。恐らく他の大人もろくに食べていない。
薬を飲んでも、何か食べないと治るものも治らないだろう。
行商人が来なくなったのも、魔物が原因である事は間違いない。
「何か食べるものを用意しておくから、少し眠るといい」
「本当? お兄ちゃん、ありがとう」
薬で熱や吐き気が治まっているうちに、ゆっくり眠った方がいい。
フィルが寝付くのを見守ってから、荷馬車から何か取ってこようと、シェイドは腰を上げた。
フードを深くかぶってフィルの部屋から出ると、やつれきった店主とはち合わせた。
「お客様、フィルは・・・・・・?」
「薬が効いたようで、今は落ち着いて眠っています」
「そうですか、よかった」
心底安堵したようで、店主はため込んでいた息を大きく吐き出し、微笑んだ。
「お疲れでしょう。日も落ちましたし、どうぞお部屋でお休み下さい」
「ありがとうございます。でもその前に、お孫さんに果物か何か食べさせてもいいですか?」
「そんな、お薬だけでもありがたいのに、食べ物まで・・・・・・」
「薬は症状を抑えるだけで、病を治すには体力が必要です。大した食べ物は持ち合わせていませんけど、何も食べないよりはいいでしょう」
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