プロローグ

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*** 「ーーいやあああっ!」  薄暗い森の中、少女の悲鳴がけたたましく響きわたった。  地面に座り込んだ少女を守るようにして、二人の少年少女が、先端に石がはめこまれた杖を手に身構えている。  彼らの周りには、人間の背丈をゆうに越える魔物が、よだれを垂らして待ちかまえていた。 「やっぱり私たちだけじゃ、迷いの森に入るのは無理だったんだよ!」  座り込んでいた少女は、怒りが混じった声で泣き叫ぶ。  それを背中越しに聞き流し、先頭に立っていた少年は杖を掲げた。 「今は話すより、戦え! 死にたくないだろ!」 「レナード、私が障壁を作って時間を稼ぐわ。あなたは攻撃魔法の詠唱をして!」  勝ち気そうな少女は手短に詠唱を済ませ、仲間の周りに半透明の障壁を作ると、それを維持するため、目を閉じて集中していた。  レナードと呼ばれた少年は、少女の集中力が保っている間に、攻撃力の高い魔法の準備に取りかかった。 (思い出せ・・・・・・昨日授業で習った、十二小節の呪文・・・・・・!)  習いたての魔法は成功率が低い。  それはレナード自身よく分かっているが、今はやるしかない。  障壁を維持する呪文を詠唱し続ける少女を横目に、レナードは口早に呪文を詠唱した。  一小節でも間違えれば、魔法は発動しない。  これから使おうとしている魔法は、攻撃力が高い分、呪文も長い為、失敗は命取りだ。 「レナード、もうすぐ障壁が消える・・・・・・!」  少女がか細い声を上げると、ひびの入っていた障壁が不安定に揺れた。  残すところあと二小節ーーと、レナードが力んだ瞬間。  ガラスが割れるようにして、全員を守っていた障壁が崩れ去った。  溶けるようにして消えていく破片。  魔物が牙をむき、一番手近なレナードに片腕を振り上げた。
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