プロローグ

4/4
814人が本棚に入れています
本棚に追加
/323ページ
 ーー刹那、レナードたちの前に、真っ白なローブを羽織った人陰が滑り込んできた。  フードがはだけ、現れたのは黒髪の青年だ。  目は閉じられたままだが、まるで睨まれているように、レナードは感じた。 「下がれ!」 「え・・・・・・っ」 「仲間の所まで下がれ、早く!」  あまりにも鋭い男の一声に、レナードは詠唱をやめて後ずさる。  男は薬瓶を取り出すと、地面に叩きつけて中身をばらまいた。  液体は気体化し、周囲に霧のごとく立ちこめた。  魔物たちはその霧を避けるように身をよじり、やがて去っていく。  二投目の薬瓶を用意していた青年は、身構えを解いてレナードたちを振り返った。  やはり目は閉ざされているが、青年が確かに睨みつけていると、レナード達は確信していた。 「あの、あなたは・・・・・・?」  障壁を張っていた少女がおずおず訊ねる。  青年は身なりを整えると、少女の問いに対し、淡々と応えた。 「俺はシェイド。迷いの森に住む魔法薬学師だ」
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!