第1章

41/42
821人が本棚に入れています
本棚に追加
/331ページ
「ーー本当に、面倒なことになった。これから用心しないと」 「あいつ、お前を知っているのか?」 「・・・・・・」 「もし正体を知っていたら、どうするつもりだ?」  ルーヴの問いに、シェイドは答えない。  アイザックが歩いていった方角をじっと見つめ、口角だけ意地悪くつり上げ、笑った。 「その時はーー」   ***  教師寮へ帰る最中、押さえきれない憤りを抱え、アイザックは近くの壁面に拳を叩きつけた。 「くそっ。何なんだ、あいつは!」  魔力の流れが見えないアイザックも、シェイドの周りに渦巻く何かを察した。  殺気だ。  真っ白なマントを風になびかせ、闇の中一人静かに立つシェイドの姿は、アイザックにいい知れない恐怖を与えた。  何より、アイザックは自分の目を疑った。  シェイドは目を閉じているはずなのに、屋外に出た直後、紫色の眼光が見えた気がしたのだ。  紫の眼光など、通常あるはずがない。  ただ稀に、魔力保有量の多い者は、瞳が紫色に染まる。  尊敬と畏怖を込めて、人々は紫色の目を持つ者を、 "紫紺の魔眼(モーヴアイ)"  ーーと、呼ぶ。
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!