821人が本棚に入れています
本棚に追加
/331ページ
「ーー本当に、面倒なことになった。これから用心しないと」
「あいつ、お前を知っているのか?」
「・・・・・・」
「もし正体を知っていたら、どうするつもりだ?」
ルーヴの問いに、シェイドは答えない。
アイザックが歩いていった方角をじっと見つめ、口角だけ意地悪くつり上げ、笑った。
「その時はーー」
***
教師寮へ帰る最中、押さえきれない憤りを抱え、アイザックは近くの壁面に拳を叩きつけた。
「くそっ。何なんだ、あいつは!」
魔力の流れが見えないアイザックも、シェイドの周りに渦巻く何かを察した。
殺気だ。
真っ白なマントを風になびかせ、闇の中一人静かに立つシェイドの姿は、アイザックにいい知れない恐怖を与えた。
何より、アイザックは自分の目を疑った。
シェイドは目を閉じているはずなのに、屋外に出た直後、紫色の眼光が見えた気がしたのだ。
紫の眼光など、通常あるはずがない。
ただ稀に、魔力保有量の多い者は、瞳が紫色に染まる。
尊敬と畏怖を込めて、人々は紫色の目を持つ者を、
"紫紺の魔眼"
ーーと、呼ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!