第1章

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 この広い魔法世界に、紫紺の魔眼(モーヴアイ)を持っていたのはただ一人。  謎の死を遂げた希代の大魔導師。  印象的な紫紺の瞳と、圧倒的戦闘力から紫眼の魔導師(モーヴルクスト)と呼ばれた、一人の男だけ。  アイザックは、そのたった一人の男を知っていた。  知っていたーーという表現では足りない。  もう一人の自分のような存在だった。 「ユリウス・・・・・・」  顔だけ見れば、確かにシェイドは親友ユリウスに瓜二つ。  だが、あの生ぬるい考え方はユリウスと真逆だ。  どんな状況であろうと、かつての親友は勝利を望み、戦いを楽しむ男だった。  それがどうだろう。  ユリウスが名と身分を偽って現れたと信じ、わざわざ試したというのに。  あの男の戦い方は、力こそ自分を圧倒していたが、相手に慈悲を与える生ぬるさ。  自分の知る限り、ユリウスはけしてそのような男ではなかった。  敵を徹底的に排除し、刃向かう者は何であろうとーー女子供であろうと殺し尽くす。  そんな残忍な男である一方、自らの仲間は何よりも大切に思う男だった。  そんな気高いユリウスが、一瞬でもあの男なのではと疑った自分が許せない。  なにより、親友は五年前、目の前で死んだ。  この手でーー殺した。  あの驚愕しきった友の顔を、忘れはしない。  本意ではなかったとはいえ、友をこの手にかけたのだ。 「・・・・・・っ。すまない、ユリウス・・・・・・!」  この罪悪感は、死ぬまで消えない。  消えてはならない思いだ。
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