1章 炎の記憶

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 水槽の中の揺らめく魂にすがった。その魂は自分が殺したユイスのものだ。自分が、レイスという双子の弟であった自分が、手にかけてしまった、片割れ。  ヴァルディースは泣きわめいた。許されるわけがない。誰より守りたかったはずなのに、自分がそれを裏切ったのだ。もう二度と、許してもらうことができない。もう二度と再会も叶わない。罪を償わななければいけないことはわかっている。存在するべきではないのに。けれど、それがどうしてもできないのだ。自分は永遠に、後悔に押しつぶされながら生きていくしかない。  せめてユイスが生きてくれたなら。たとえ許してもらえなくても構わない。憎まれたって殺されたっていい。それでももう一度、会いたい。独りになどなりたくはない。  願望でしかない事はわかっている。蘇るわけはない。だって目の前のユイスは魂だけしかない。肉体は自分が焼きつくしてしまったのだから。 「ユイスは生き返るって言ったら、ヴァルディースを返してくれるかい。ヴァルディースの中に残った子猫ちゃんの残り火よ」  ヴァルディースは振り返って困惑した。目の前に立つ、銀髪に白衣を着た胡散臭い男を、どこかで見た気がした。だがそんな事はどうでもいい。こいつはユイスを生き返らせるなんて言ったのか?     
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