5章 懐かしき光の大地

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 ユイスが意識を取り戻したのは、どれくらい経ってからだったのだろう。いつの間にか辺りは何も見えないほどの闇に包まれていた。  視線を落としても指先すら見えない。星も見えない夜とも違う。ぞっと寒気が襲ってくるほどに深い闇。  ただ、意識があって感覚はあるということは、死んだわけではないのだろうと、ユイスは安堵した。幸いというべきなのか、ユイスはすでに一度死んで魂だけの状態を経験している。何も知らなかった時に比べれば、パニックを起こさない程度には現状への対応ができていた。 「でも、ここはどこなんだろう……」 「ロゴスの闇の中だ」  自問に対して唐突に返ってきた男の声に、ユイスは怯えた。てっきり誰も居ないものだと思っていた。すぐそこから聞こえた気がするのに、闇が深すぎてどこに何がいるのか全くわからない。  そういえば、意識を失う前に誰かに腕を掴まれた気がする。あの場にいた誰かだとすればユイスを追いかけてきたタトラの部下だろうか。でも普通の人間がこの闇に耐えられるとは思えない。それに、ここがロゴスの闇の中だと明言したことも、ユイスに不安を抱かせた。 「誰、ですか」     
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