5章 懐かしき光の大地

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 恐る恐るの問いかけに、男は応えなかった。代わりに浅い嘆息が返ってくる。 「時間がない。ザフォルの計画は頓挫した。俺のところに四属性の魔力は届いたが、女神は生まれなかった。魔力も何者かに奪われたようだ」  一方的に告げられてもユイスには何がなんだかわからない。ますます困惑するばかりだ。ザフォルの名前が出たということは今回のことに絡んだ誰かなのだろうが、そもそもユイスはザフォルから、レイスたちを追ってきたアルスの身柄を確保するということしか聞かされていない。 「あの、僕には何がなんだかさっぱり、なんですけど」  もう少しわかるように説明をしてほしいと求めたものの、それも無視される。 「セリエンと入れ替わりにザフォルが戻ってくる。光の剣を使えれば、ロゴスの闇は晴れるだろう。ただし、このままでは全員闇と一緒に消滅するしかない」  不安しか募らない中で、闇の中から突然強い力で腕を掴まれ、思わず悲鳴が上がった。 「離してください!」 「頼む。レイを、起こしてやってくれ。俺がここをもたせている間に」  とっさに腕を振りほどこうとして、相手が口にした名に思考が止まる。ここでレイと呼ばれるのは一人しかいない。     
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