5章 懐かしき光の大地

37/52
前へ
/311ページ
次へ
 本音を言えばこんな相手に頼りたくなどない。しかし、闇ばかりはグライルに頼むしかない。 「この闇から脱出する手は?」 「光の剣が届いた瞬間にフェイシスとユイスを繋ぐ。それしかない。そのためにはレイスを起こさなければならない」  光の剣というのはセリエンの剣のことだ。夢幻境界に追いやったヴァシルをセリエンとザフォルでカタをつけ、戻ってくる手筈だったということなのだろう。しかし、外ではあの女が暴走し、ヴァシルのいる時空に繋ごうとしていた。フェイシスとユーアだけで、はたして持ちこたえさせることができるのだろうか。そもそも本当にザフォルとセリエンでヴァシルを片付けられるのか。 「猶予も確証もない、博打みたいな計画だな」 「ステイが、ヴァシル救出のためにスイッタへ協力をしなければ、もう少しマシだったはずだ」 「ステイ?」 「エスティレードという、おまえの契約者の末裔だ」  暴走していたあの女の名だと、ヴァルディースは気がついた。  レイスの記憶にあの女の姿はなかったが、グライルはよく知っている様子だ。詳しく聞いてみたいところだったが、おそらくまた答えないだろう。     
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!

349人が本棚に入れています
本棚に追加