5章 懐かしき光の大地

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 闇の中に溺れる。もがいてももがいても息苦しさは消えない。むしろますます深みにはまって押しつぶされていく。  苦しい。苦しくて仕方ない。押し寄せ、身体に無理やり入り込んでこようとする闇が気持ち悪い。  もう嫌だと叫ぶ。苦しいのは嫌だ。つらいのも嫌だ。寂しいのも悲しいのも、恐ろしいのももう嫌なんだ。早く終わらせてくれ。早く存在ごと消してくれ。助からなくていい。助かる価値なんて何もない。何もかも失った。どこへいくことも何をすることもできない。  もうすがるものなんて何もない。あの狼ですら、この手で、汚れきったこの手で消してしまったではないか。  レイスは叫んだ。もがきながら泣き叫んだ。波のような闇が押し寄せ、飲み込もうとする。  その波は多くの人間の怨念。恨み、憎しみの負の感情。受け止めることなどできず、むせ返る。  消えようなど、楽になろうなど許すものかと怨念が叫んだ。逃すものか。お前も同じ苦しみの中に未来永劫閉じ込められろと引き摺り下ろされる。  足掻く力も奪われる。疲れ、足も腕の動作も緩慢になって、沈んでいく。     
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