5章 懐かしき光の大地

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 グライルが叫ぶ。腕の中のレイスがその声にはっとした。  顔を真っ赤にしたユイスが、慌ててフェイシスの名を叫ぶ。  引き裂かれた空間に、光に続いて滝のように水が流れ込んだ。水は声に導かれるままユイスを引き寄せ闇の中から掬い上げる。ヴァルディースはレイスを強く抱きかかえたまま、引きずり出されていくユイスにしがみついた。 「グライル、お前も!」  来い、と手を差し伸べようとした。しかし光に照らされた闇の向こうで見た姿に、ヴァルディースは呆然とした。伸ばした手は何も掴むことができなかった。グライルはもはやほとんど闇と同化して、老人のように嗄れていたのだ。 「あんた、なのか」  レイスが抗うように、ヴァルディースの腕の中から身を乗り出した。ヴァルディースは再び闇の中に落ちそうになるレイスを咄嗟に引き戻す。レイスの手はグライルに届くことなく、水の勢いに乗ってどんどん引き離されていく。 「待ってくれ、いやだ。なんであんたが!」  光に覆い尽くされ、存在が掠れていく中で、グライルが微笑んだような気がした。  あれではもう助からないだろうということは、誰の目にも明らかだった。抗ってしまえば取り残される。行け、と、微かにグライルの声が聞こえた気がした。     
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