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それでも、すがりついてきたレイスをもう一度強く、ヴァルディースは抱きしめた。
「全部、俺様のせいにしときなよ」
不意に上から声が聞こえた。見上げた太陽の陰に白い姿が見えた。
「炎狼さんよ、騙しちまってすまなかったな」
ふざけた口調に怒りが呼び起こされる。ヴァルディースがそんな感情を抱く相手は、今一人しかいない。
「馬鹿を言うな。許されると思ってるのか、ザフォル・ジェータ!」
ザフォルにはグライル以上に問い詰めなければいけないことが山のようにあった。散々振り回しておいて、グライルまで犠牲にしてこんな結末にたどり着かせて、すまなかったの一言だけで済むわけがない。
しかし叫んだ途端にヴァルディースは息を飲んだ。
世界中の魔力がそこに収束していた。放出される魔力と、それを押し込めようとする魔力が激しく拮抗し、空間を歪めるほど火花を散らす。ザフォルの結界がステイと言ったあの女と、ほとんど同化したスイッタを束縛していた。そしてその結界を支えるザフォルは、半身を失っていた。
ヴァシルとの戦いの壮絶さをありありと映したザフォルの姿に、ヴァルディースは血の気が引いた。
「ほんと、悪いね。俺様も到底許してもらえるとは思ってないんだけど。でも、今はそれくらいしか言えなくって」
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