5章 懐かしき光の大地

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 そう言いながら、ザフォルらしからぬ荒い呼吸を繰り返し、結界を破ろうとする女と対峙する。手負いとはいえザフォルの力をもってしても、女の力は内側から結界にひびを入れるほど。  周りを見回してもフェイシスもユーアも、メイスまでももう動ける状態ではない。  まだレイスを放り出すわけにもいかない。もしレイスを手放すことができたとしても、ザフォルを救援するなど、今の自分に考えられるのか。 「ああ、いいよいいよ。俺様だけでなんとかするから。ただ、女王陛下に伝えてくれるかい?」 「何を、言ってる」  ザフォルがくすりと、声をこぼして笑った。 「本当はアルスのクソ野郎ひっぺがして、滅ぼしちまいたかったんだけど、しょうがないから一旦あんたたちに預けるって」  ザフォルが練り上げて引き絞っていた結界を、逆手に構えた。その途端、結界の魔力が凄まじい勢いで逆流し始める。 「何言ってんだ、おい!」  気を抜けば吸い込まれる。そのヴァルディースの前にもう一段、障壁が立ちはだかった。 「あと、愛しのレイスくんにも言っといてよ。また友達になってやってくれ、って。でも今度はサーレスって、呼んでやってほしいなぁ」  女を閉じ込め、結界を背に苦笑したザフォルの言葉は、ヴァルディースにはさっぱり意味がわからない。  巨大な空間の歪みがその背後で口を開けた。魔力の逆流が加速する。     
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