1章 炎の記憶

37/65
347人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ
 ヴァルディースは絶叫した。  館中に響くほどの大音で叫んだ。壁がたわみ、水槽のガラスが激しく振動した。  ヴァルディースの炎が荒れ狂い、周囲の物を焼き、破壊する。炎はまたヴァルディースの体をも包み込み、自らの炎で自らを焼き滅ぼそうとした。  それは激しい後悔であり自分自身への強い憎しみだった。ユイスは死んだ。なぜか。自分が接触してしまったからだ。自分が存在したからだ。自分があいつと会いたいと願ってしまったからだ。それが最悪の形で、ガルグに弄ばれるという結末を招いた。自分がこの手で、ユイスを殺した。  無我夢中でヴァルディースは自分の体に爪を立て、肉を割き、己の体に流れる血肉を炎で焼き尽くそうとした。体の中で炎が燃え上がり、肉が焼ける痛みにのたうちまわろうとした。ヴァルディースは罰されたかった。罪を憎み、滅びという贖いをしたかった。けれど、どれほど感情を暴走させても、望むものは訪れなかった。  ヴァルディースの体はヴァルディースの炎では滅ぼすことなどできるわけもなかった。ヴァルディースは唸った。なぜだと叫んだ。なぜ自分だけは死ぬことができないのだと呪った。ガルグのせいか。呪われた自分のせいか。     
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!