4章 水の都に迫る戦禍

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4章 水の都に迫る戦禍

 呆然と、ヴァルディースは城壁に腰掛けて海を見つめていた。島の断崖に作られた水晶の城からは、メルディエルの海と連なる島々が一望できる。  何も考えずに潮風に吹かれて海を眺めていると、まるでここしばらくのレイスとの日々が、全て夢か幻のようにすら思えていた。  しかし全てまぎれもない現実であり、レイスは奪われ、ロゴスは逃走した。  闇の侵食が酷かったフェイシスは、メルディエルの設備で浄化が進められてはいるものの、未だ意識は戻らない。復活したばかりのユイスはフェイシスにつきっきりだ。  ロゴスの行方はメルディエルの精鋭が昼夜徹して捜索に当たっているが、特定できてはいない。はっきりと分かるのは国境に張り巡らされたガルグの探知網にかかった形跡がないため、依然としてメルディエル国内に潜伏しているということのみ、だそうだ。セリエンが先ほど そう言っていた。  さすがにメルディエル国内では、幹部クラスのガルグでも気づかれることなく外部に接触することは不可能だ。  闇を唯一浄化できるのは魔力の中でも特殊な、光という属性だけだが、その光で操る術式がメルディエル中に張り巡らされている。     
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