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5章 懐かしき光の大地
「お前のとーちゃんは、お前らを捨てて出てったんだろ。捨てられっこ!」
村の子供達はユイスとレイスをそう言って笑った。
自分たちには父がいなかった。どこかに行った、とも死んだとも聞かされていなかった。違うと否定しても否定しきれないのも事実で、ユイスはいつも泣くだけ。
泣けば余計に笑われる。いじめられる。それを助けてくれたのはレイスだった。
「ふざけんなてめーら!」
殴られても蹴られても逆に何倍にもやり返して、レイスは最後に勝ち誇ったようにユイスに向かって笑った。
ユイは泣き虫だなぁ、と。そして泣きやまないユイスに、しょうがねぇな、と手を差し伸べてくれた。
レイスの泣き顔なんて、双子なのにほとんど見たことがなかった。
ユイスは自分の方が兄なのになさけないと思いつつ、結局レイスに甘えてもいた。
それがあたり前だと、あの頃は思っていた。その関係が壊れるなんて、考えてもいなかった。
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