347人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ
エピローグ
レイスと並んで森の手前にある小さな石碑の前に立っていた。後ろにはユイスやメイスが見守っている。レイスはなかなかその前に立つことができなかった。白い石には何もない。が、レイスにはわかる。そこが母ファイナの死んだ場所なのだ。
表情を変えることなくただ石を見つめるレイスの肩をヴァルディースは抱き寄せた。
「無理はするな」
声をかけたが、それをむしろ振りほどくようにレイスは前に進んだ。震える足で跪き、恐る恐る石に手を伸ばす。
ヴァルディースにはそれを見守ることしかできない。風が吹き抜ける。ヴァルディースの中にレイスの悲痛な感情が流れこんでくる。
「母、さん……」
か細い声で、レイスが母を呼んだ。白い石をまるで抱き込むようにして頽れる。
ユイスとメイスがたまらず駆け寄ろうとした。それをヴァルディースは制止した。代わりに自分がレイスの傍らに腰を下ろす。
レイスとの間に余計な会話はいらない。石にしがみつくレイスの手を包み込み、強張った指を解していく。
最初のコメントを投稿しよう!